• 程暁農★中国海軍はなぜ真珠湾を目指す?  2020年2月28日

    by  • March 3, 2020 • 日文文章 • 0 Comments

     今年2月、  中国海軍は、  パールハーバーに狙いを定め、  遠洋艦隊をミッドウェー諸島以南の海域に派遣した。  これは、  おそらく太平洋戦争後の60余年間で、  初めて外国艦隊が、  その昔、  大日本帝国海軍が奇襲攻撃をかけた真珠湾とミッドウェー島の作戦水域に進出した演習だ。  米国海軍を仮想敵とする中国にとって、  この演習は常ならぬものである。  今後、  広大な太平洋はどう変わって行くのか大いに分析に値する。 

    中国 何清漣

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    これまでの何清漣さんの論評の、翻訳はこちら。過去のものはウィンドウズやMacのサファリでは、句読点が中央配置になります。Macのchromeがおすすめです。なお、「拙速」でやってますので誤字、脱字ご勘弁。(電子本の方は校閲して直してあります。多分w) なお、お気付きの点がございましたらお知らせください。ツイッター → @Minya_J。

    中国 何清漣

    ★⑴ 中国海軍は遠洋作戦を追求

     中共は、  陸軍が国民党軍を打ち破って政権を奪い取った。  海軍は、  ソ連の援助によって作られたもので、  過去60年近く、  沿岸・近海防衛用の海軍にすぎなかった。  それが今、  遠洋海軍に変わろうとしている。 

     遠洋作戦能力を海軍が求める目的は、  近海周辺国家の海軍を目標とした単純なものでは、  あきらかにない。  米国海軍の太平洋艦隊に照準を合わせているのだ。 

     現代史上、  米国太平洋艦隊は、  一度しか大戦闘を行ったことはない。  敵は、  太平洋戦争で殲滅された大日本帝国海軍の連合艦隊だった。  今、  また米国艦隊を戦略的仮想敵とした海軍が現れた。  それが中国海軍だ。  そして、  そこからは日本の連合艦隊の作戦前行動を模倣している様子が多々伺える。 

     中国海軍ができて、  最初の10年間は、  艦船も人員的にも限界があった。  基本的には、  小型の砲艦、  魚雷艇、  小型巡視船が、  主として沿岸防衛パトロールにあたっていた。  当時は、  海峡を挟んだ向かいの国民党軍の海軍にも、  巡洋艦以上の大型艦はなかったが、  それでも駆逐艦があったので、  中共の弱小海軍に対しては、  ある程度優勢だった。 

     だから、  中共の海軍は、  沿岸の港から夜間に攻撃をかけて逃げる戦術しかとれず、  脅威でもなんでもなかった。  しかし、  1980年代から、  中共は、  次第に多くの数千トン級の駆逐艦を建造し、  その海上活動は、  近海水域まで広がってきた。 

     過去数年間は、  中共は航空母艦艦隊と艦載機部隊を作り始めた。  目的は明らかに遠洋海軍だ。 

     航空母艦は、  近海作戦には必要ではない。  近海水域では、  陸上基地からの航空機が、  艦載機と同じ仕事ができるからだ。  しかし、  陸上からの航空兵力は、  燃料的限界があるので作戦半径は限られる。  航空母艦搭載の艦載機でないと、  遠洋での戦闘の役には立たない。 

     空母の艦載機があって初めて、  遠洋海域での戦闘の任務が果たせる。  この点から見て、  中共が空母攻撃群を建設するのは、  最初から太平洋上の唯一の空母攻撃群、  すなわち米国太平洋艦隊に照準を合わせたものだ。  これは大日本帝国の連合艦隊の会場戦略と同じだ。 

     ★⑵ 中共遠洋海軍に欠けるもの

     遠洋海軍とは基本的に攻撃パワーで、  3側面によって決まる。 

     第一は空中、  水面、  水面下の立体的な打撃力をなす各種の武器。  そして、  空母打撃群とは遠洋攻撃任務における遊撃基地である。  有効な作戦能力をもつ空母打撃群を建設するのには、  相当長い期間を要する。 

     中共は、  第2次大戦の海軍の歴史を回顧して、  空母の操作運用の部分を参考にした。  しかし、  米国海軍のそれは完全に機密になっており、  中共海軍としては、  それを直接利用できなかったので、  手探りするしかなかった。 

     例えば、  海軍刊行物の「艦船知識」雑誌のインタビューで、  中共海軍の2万トン級の「微山号」総合補給艦が2004年に就航した時、  船員の訓練教材がなかった。 

     だから自分たちでそれぞれの部署の操作規定を編集するように要求された。  他にも艦載機のパイロットが必要な24時間離着陸の技術や空中探索識別能力は、  ゆっくり学んで行くしかなかった。  獲得できたパイロットは、  長時間飛行記録をもった数少ないエリートパイロットだけだった。  作戦能力は、  さらに反復練習が必要なわけだが、  中共の空母攻撃群は、  まだ創生の時期であって、  訓練によって養成中。  戦力にまで至っていない。 

     第二には、  海上補給能力だ。  太平洋戦争から今日に至るまで、  海戦のなかで変わってないのは、  燃料補給問題である。  核動力の空母と潜水艦を除いて、  大部分の艦船にとっては数千海里の航海では、  これがなければ出発しても戻ってこられない。 

     だから、  通常艦艇の海上作戦能力は、  海上での補給如何にかかってくる。  艦艇自体が積める燃料では遠洋艦隊の巡航の片道しか持たない。 

     大日本帝国の山本五十六司令官が計画した真珠湾攻撃計画に、  海軍軍令部が疑問を持った理由がまさにこれだった。  遠洋航海の海上補給技術が未解決だったのだ。  そして、  当時、  米国の太平洋艦隊が、  防衛にミスを犯した理由もまた、  これが原因だった。  日本の連合艦隊はこの問題を解決していたのに気がつかなかったのだ。 

     中共海軍は、  大量の補給能力を持つ補給艦を携えなければならないばかりか、  さらに、  各種艦艇は、  みな海上補給能力を備えなければならない。  そして、  これは波の高い太平洋上でしか訓練できない。 

     10年前、  ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が米国防大学教授のボナード・カールをインタビューしたが、  彼は、  中国の海上補給船はどれも2万2千トン以下で、  米国の補給艦は4万トンだと指摘。  海上補給がなければ、  遠洋艦隊もありえない。  もしある日、  中国側が大量の海上補給船を建造し始めたら、  遠洋艦隊建設の信用できる証拠だと語っている。 

     今回、  中国メディアは、  中国海軍艦艇が、  ミッドウェー海域での訓練で、  その中に2019年2月に就航した4.8万トンの総合補給艦「査干湖号」(ペイントナンバー967)が含まれると報道した。  これは駆逐艦に燃料補給可能なだけでなく、  空母攻撃群に給油できる。  つまりこれは、  中共海軍は遠洋補給問題を解決したということだ。 

     ★⑶ ミッドウェー島の付近で「対海賊演習」だと?

     今回の中共艦隊は南部戦区(原注:多分基地は、  海南島の三亜)で、  「艦隊はバシー海峡を東に向かい、  北回帰線にそって最短コースで、  ミッドウェー島南500kmの国際日付変更線を越えた。 

     ここから巡航ミサイルを発射すれば、  直接ハワイに届く」「戦艦は現在、  ハワイを目前に、  ミッドウェー島とグアム島の三角形の真ん中の太平洋上にあって、  これは第二次大戦で日本海軍を米国が阻止した中心領域であり、  ハワイと三つの島の結節点であり、  米国本土への最後の障壁。  今まで、  ここに戦闘体形で踏み入れた国はない」と中共の官製メディアは報道している。 

     中共官製メディアは、  この演習について、  奇妙な言い方をしている。  「対海賊に備えたものだ」と言うのだ。  中国海軍の艦隊が、  「戦闘隊形」でこの海域で活動したのは事実だが、  「海賊に備えて」は馬鹿馬鹿しい話だ。 

     まず、  この海域は太平洋横断の商戦の重要な航路で(太平洋横断南航路)で、  往来の船舶は大変多く、  外国の海軍は商船としょっちゅう鉢合わせしたくなければ、  この航路は避ける。 

     次に、  海賊が出没しているのは、  ソマリア海域の紅海や中東地区のアデン湾だ。  ハワイやミッドウェー島海域に、  海賊が出たなどという話は聞いたことがない。 

     真珠湾は米国海軍の第三艦隊の基地の一つだ。  ミッドウェー島、  グアム島、  今回中共海軍が演習を行ったウェーキー島には、  皆、  米軍の通信施設と飛行場がある。  もし、  海賊が略奪行為を行なったら、  米国海軍の航空機からの攻撃を免れない。  「海賊云々」は、  真の意図を隠そうとするものだ。 

     しかし、  官製メディアの報道にはヒントがもある。  この艦隊には815電子偵察艦天樞星(ドゥーベ)号が所属している。  天樞星号は中国の最も秘密にされている電子偵察船で、  同形艦は9隻。  満載排水量5998トン。  船上には各種の電子設備を持ち、  敵方の電波信号を収集し、  情報収集にあたる。  秘密度合いは極めて高く、  海軍のハイレベル層以外は情報にタッチできない。  同形艦は、  何度も米、  日の艦船の電波情報蒐集に当たっている」

     ★⑷ 戦知らずの戦好き

     政府メディアは、  今回の海軍艦隊派遣は、  ミッドウェー海域演習を最終目的としているという。  「南部戦区の任務は敵の援助行動阻止、  つまり太平洋の縦深作戦地域を迂回し、  北部戦区の援助行動阻止の動きと連携して、  台湾海域の戦場に外国軍の介入を防ぐことにある」というのだ。 

     この「外国軍」は当然、  米国海軍のことだ。  この戦略構想は、  大日本帝国連合艦隊が対米戦略として太平洋戦争前に練った構想と同工異曲だ。  太平洋戦争前、  山本五十六連合艦隊司令官が立てた対米戦略は、  マレー、  シンガポール、  オランダ領東インド(後のインドネシア)を占領するに際して、  米国の太平洋艦隊に本土爆撃をされないように、  一挙に米国太平洋艦隊の主力を叩き、  米国と有利な講和を結んで戦争を終わらせるというものだった。 

     この戦争の始まり時は、  確かに米国に軍事上の失敗をさせはした。  しかし、  米国に講和を求める空気を作ると言うのは完全に失敗だった。  逆に米国国民の戦闘意欲を掻き立て、  最後には大日本帝国は敗戦と消滅の幕切れとなった。 

     大日本帝国の教訓は、  戦術上の間違いではなく、  軍の首脳がそもそも根本的に、  戦争とは何かを分かっていなかったことだ。  彼らは、  軍人の狭い視野から、  戦場の勝利を戦争の勝利と同一だと思い込んだ。  そして、  個人の認識上の国家の地位と対外軍事行動(原注:中国侵略戦争も含めて)は、  国民と外国が、  必ず受け入れるはずだと決め込んでいた。 

     大日本帝国が犯した最大の錯誤とは、  「戦知らずの戦好き」が戦いを求めたことだった。  この観点から言えば、  今日の中共の軍部のタカ派とよく似た特徴がある。 

     「戦知らずの戦好き」には三つの面がある。 

     まず、  戦争を作戦行動とごっちゃにして、  軍人は、  ただ戦場での勝利の栄光を追求する。  しかし、  戦争の目的は、  戦争ではなく、  ましてや単純に国民に政府を支持させることでもないことは、  全然わかってなかった。 

     戦争は、  政治目的を達成する手段の一つである。  米国の軍部が戦争を学ぶ学校を作っているのは、  未来と現在の将軍たちに戦争学を教えて、  戦略、  戦術といったことだけでなく、  軍人は国家を自分たちの望む方向に引きずり込んではならないということを深く理解させるためだ。  しかし、  中共の国防大学には、  こうした考え方や認識はなさそうだ。 

     例えば、  米国に対して戦争を軽はずみに仕掛けたら、  どうやって終わらせるのか? かつての日本の軍国主義者が犯したのが、  まさにこの間違いだった。  山本五十六を代表とする少数の高官は、  戦争をもって和を求めようとした。  政治手段で自分たちが始めた戦争を終わらせるつもりだった。  しかし、  どうすれば達成できるかを知らないまま、  ただ戦争を続け、  最後には徹底的な敗北で終わったのだ。 

     次に、  中共の戦争を鼓吹する連中がわかってないのは、  戦争を始めるのは簡単だが、  戦争の進展のコントロールは、  ほとんど不可能だということだ。 

     軍事、  政治、  経済で徹底的に相手をやっつけるという目標は、  続けていけば食うか食われるかという一本道しかない。  二つの大国間でいったん、  戦争が勃発すれば、  核戦争の話は別としても、  通常の戦争でも、  戦時状態では双方が必然的に、  総動員体制の戦争になってしまう。 

     戦場での初期的な勝利などは、  双方が国力を挙げての戦いになれば、  そんなものはゼロになってしまう。  そして、  戦争がいったん、  自らの軌道を走り出せば、  戦争自身によって、  始めた者が行き詰まりの道を歩まされることになる。  自国の惨憺たる損害を招き、  途中でその責任を放棄することはできず、  ただ戦争状態を無理やり高圧的に、  支えきれなくなる日までやっていくしかない。 

     最後に、  中共海軍の崛起は、  それによってもたらされるのが良いか悪いか、  なかなか弁じがたい。  大日本帝国海軍の最高レベルが、  対米開戦を決めた時、  優先したのは国家全体の利益ではなく、  自分たちの軍の利益だった。  戦争をしなければ、  海軍が軍事費や軍の工業的リソースを得られないから、  海軍の地位が下がると考えたのだった。 

     中共海軍は、  今、  ずっと続いてきた「陸軍の天下」という局面を抜け出し、  戦争を始めて陸軍と同じ地位に座りたいのだ。  しかし、  この海軍の崛起は、  対外戦争を求めることによってなのだ。  もし、  海軍の実力を広げ、  地位を上げるために、  戦争を求め、  世界大戦をおっ始めようと言うのなら、  それは必然的に海軍の壊滅となるだろう。 

     当然、  我々は、  今、  まだ中共海軍がどの程度本当に大日本帝国海軍が始めた太平洋戦争の悲惨な教訓を学んでいるかは知らない。  またそのハイレベルが十分な戦争準備をしているのかどうかもわからない。  しかし、  現在の中共海軍の対外姿勢からは、  確かに、  かつての大日本帝国海軍の亡霊の姿がチラチラと見えるのである。  (終わり)

     原文は;程晓农:中国海军剑指珍珠港,意欲何为?

    関連;程暁農 ★米国に挑戦する中国軍事戦略の意図  2019年6月10日
     
     

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